成年後見制度とは

●はじめに

「認知症などで自分のことが自分でわからなくなってしまった時はどのような制度が使えますか。誰が助けてくれますか」

「認知症になって生活の世話などで家族に迷惑をかけたくない」

「後見人という話を聞いたことがあるのですが、何をする人ですか」

「一人暮らしの親がお金の管理ができなくなり不安で仕方がない」

このような相談が増えています。

その時に、一つの選択肢として提案しているのが成年後見制度です。

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下し、1人では自分の身の回りのことや財産について管理できなくなってしまった時に、あるいは、その時に備えて、後見人を選任し、後見人にその方の支援をしてもらう制度です。

今回は、成年後見制度の概要について解説していきます。

●どれくらいの人が認知症にかかるのか

知的障害や精神障害など、判断能力が低下してしまう原因には様々なものが考えられます。今回は多くの人にとって関心が高い認知症について、一体どれくらいの人が認知症にかかるのかについて少し触れておきます。

65歳以上の高齢者のうち、どれくらいの方が認知症に罹っているのかを知る資料として、平成29年版高齢社会白書における将来推計あります。

それによれば、2012年に65歳以上の高齢者の7人に1人だった認知症有病率が、2025年にはおよそ5人に1人になるともいわれています。

また、2013年の厚労省の研究事業における報告書(※)では、80歳の後半において、男性のおよそ35%、女性のおよそ44%が認知症であるとされています。

このように見ると、高齢社会は、認知症とともに生きていく社会ともいえます。

上記の統計からわかる通り、そのような社会では、自分が将来認知症になることは決して稀なことではありません。

※構成労働科学研究費補助金認知症対策総合研究事業報告書より

●成年後見制度には2種類ある

成年後見制度は大きく分けて2つの種類があります。

法定後見と任意後見です。

法定後見とは、すでに判断能力が低下してしまった人について、後見人を選任し、その方の身の回りのことや財産管理のサポートをする制度です。

任意後見とは、まだ元気なうちから、判断能力が低下してしまったときに備えて、後見人となってくれる人を選んでおくものです。この場合は、後見人になってくれる人と任意後見契約を結んでおき、判断能力が低下して時に、締結しておいた契約を発効させるという手続きを踏みます。

それぞれ仕組みが異なりメリットやデメリットがあるので、別の記事で解説しようと思います。

どちらにしても、誰しもが安心して後見制度を利用できるように、後見人の選任や後見人が就任した後に、後見人が十分に仕事を務められているか、不正なことをしていないかチェックをしてもらえる制度になっています。

●まとめ

・高齢社会に伴い、認知症にかかる高齢者も増えており、将来も増えていくことが予想されている。

・認知症とともに生きていく社会では、認知症などで判断能力が低下したときにも安心して生活できる制度が必要である。

・成年後見制度は、判断能力が低下してしまった時に、その方をサポートしてくれる後見人を選任し、後見人としての仕事が十分にできているかチェックをしてくれる制度である。

・成年後見制度には、法定後見と任意後見がある。

・法定後見は、すでに判断能力が低下してしまった人に対して、後見人を選任しサポートしてくれる制度である。

・任意後見は、この先判断応力が低下した時に備えて。あらかじめ自分の希望する後見人を選任しておく制度である。