任意後見のご利用ガイド②ー任意後見契約の締結ー

●はじめに

「任意後見契約書の内容はどのようなものですか」

任意後見契約とは、基本的に任意後見契約書・代理権目録・後見事務報酬基準で構成されます。ここに必要に応じてライフプランを足すこともあります。

今回は、それぞれの構成部分について概観していきます。

●任意後見契約書

契約書に盛り込む項目は大体以下の通りです。

・契約の趣旨 

 判断能力が低下したときに受任者に代理権を与えることが目的です

・契約の締結

 本人が信頼する人に後見事務を委任すること、信頼する人がそれを受任することを明示します。

・契約の発行

 任意後見契約が、任意後見監督人が選任された時から発効されることを明示します。

・委任事務の範囲

 通常、代理権目録記載の事項を委任することを明示し、代理権目録を別途作成します。

・身上配慮の責務

 身上監護についての項目です。後見人は、医療介護サービス事業者と連携をとりながら、生活状況や健康状態の把握に努め身上に配慮して適切な事務処理をしなくてはならないことを明示します。

・証書等の保管等

 後見人が本人の証書を保管したり利用したりすることを明示します。また、郵便物の受取や開封をすることができる旨も明示します。

・費用の負担

 後見事務に必要な諸経費は本人の負担となり、後見人は本人の財産のの中から支出できる旨を明示します。

・報酬

 後見事務のために定期的に後見人に支払われる報酬を明示します。

 また、臨時対応に対するものとして後見事務報酬基準で定めた事務を行った場合の報酬を受けることができる旨を明示します。

・報告

 後見人は、決められた期間毎に後見監督人に財産の管理状況や身上監護で行った措置、収支状況や報酬の収受について報告をする旨を明示します。期間は本人との間で適切に定めます。

・書類の作成

 後見事務を処理する時に作成する書類について明示します。

 書類とは、財産目録や会計帳簿、事務処理日誌などです。

・契約の解除

 任意後見監督人が選任する前(つまり任意後見契約が発効する前)であれば公証人の認証を受けて契約を解除できることを明示します。

 また、任意後見監督人が選任された後は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除できることを明示します。

・財産の引き渡し

 任意後見契約が終了した場合の本人の財産の引き渡しついて明示します。

・守秘義務

 後見事務において知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはいけないことを明示します。

●代理権目録

代理権目録に記載する事項は、本人が後見人に委任した事項です。

親族が後見人になる場合は、そこまで神経質になる必要はないかもしれませんが、第三者が後見人になる場合は、代理権目録の委任事項の穴があり、本人の権利擁護のために必要なのにも関わらず後見人に委任されていない事項があると、結局法定後見への切り替えが必要になることがあるので、本人とじっくり話し合い隙のない代理権目録を作成することが大事です。

●後見事務報酬基準

毎月定期的に発生する報酬だけでなく臨時の手続きを後見人が行った場合の報酬について定めておきます。

また、任意後見監督人申立てに要する費用は基本的に任意後見人受任者の負担となるので、受任者が申立てを行った際の報酬も定めておくと良いです。

●ライフプラン

ライフプランは指示書とも呼ばれます。

本人の理想とする生活、判断能力が低下してからも続けてほしいこと、財産の管理の仕方等を具体的に盛り込み、後見人に代理してもらうことを目的としているからです。

医療に関してどこまで治療を望むのか、どのような形の葬儀や納骨を望むのか、毎朝必ずコーヒーを飲みたい等生活習慣で大切にしていることは何かなど、さまざまな要素を記載しておくとよいです。

●まとめ

・任意後見契約の構成要素は、任意後見契約書・代理権目録・後見事務報酬基準・ライフプランである。

・任意後見契約書は、任意後見のベースとなる書類である。

・代理権目録は、後見人に委任したいことを記載する

・後見事務報酬基準には、定期的な報酬だけでなく、臨時の対応に伴う後見人への報酬を記載する。任意後見監督人選任の際の報酬も記載しておくと良い。

・ライフプランは、指示書とも呼ばれ、本人の望む生活や財産の管理をより詳しく後見人に託したい時に作成するとよい。