法定後見ご利用ガイド①ー利用の流れー

●はじめに

「認知症の親が施設入所をするために定期預金を解約しようとしたが、本人でないと解約できないと言われた。」

「父の死により遺産分割を行わなければいけないのに、相続人の母が認知症なので、協議を開くことができない。」

このような場合、法定後見の利用により、後見人のサポートが必要になります。

前回の記事では、法定後見の3つの類型について解説いたしました。

今回は、実際に法定後見を利用する際の手続きの流れについて説明していきます。

●法定後見の利用の流れ

法定後見の利用の流れは以下のように2つに分けることができます。

・裁判所への申立ての流れ

・後見人選任後の流れ

それぞれ解説していきましょう。

●裁判所への申立ての流れ

法定後見によって後見人を選任してもらいたい時にはまず裁判所への申立てをします。

申立ては、本人・配偶者・4親等内の親族の方であれば可能です。

※4親等内の親族に関してはこちら。

親族以外では、未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・検察官も申立てができます。

これらの者がおらず、4親等内の親族がいないあるいは申立てができない、申立てを拒否している場合は、市町村長による申立ても可能です。

申立ての流れとしては以下の通りです。

◇申立て書類の準備

・申立てをする裁判所の管轄を確認する

・本人情報シートの作成を依頼する

・診断書の作成を依頼する

・市役所などで必要書類を取得する

・親族に同意書を記入してもらう

・各種申立て書類を作成する

・添付する書類を収集し、コピーをとる

◇申立ての準備

・申立て日の予約をする

・予約当日に家庭裁判所へ行く

・家庭裁判所の調査官と面接をする

◇審理と審判の確定

・本人の調査

・親族への意向照会

・鑑定 ※必要に応じて

・審判

・登記

●後見人選任後の流れ

上記の手続きが完了すると、以下の通り、選任された後見人は裁判所に初回報告を行い、基本的に年に一回定期報告を行わなければなりません。

◇初回報告

・本人の資産把握し財産目録の作成

・年間収支予定表の作成

・作成した財産目録と収支予定表を家庭裁判所に提出する

◇各関係機関への手続き

・後見登記事項証明書の取得

・金融機関への届け出

・年金事務所や役所への手続き

◇定期報告

・後見等事務報告書の作成

・財産目録の作成

●期間

申立てから審判・登記が確定するまでに1ヶ月半から2ヶ月ほどを見込んでおくと良いでしょう。ただし鑑定が必要になった場合は、これよりも期間が延びる可能性があります。

●費用

鑑定が必要がなく、専門家によるサポートを利用しない場合は、15000〜20000円程が実費でかかります。

以下、項目別の費用をリストアップしておきます。

◇申立費用

・申立手数料:800円

・登記手数料:2600円

※保佐・補助で代理権や同意見の付与の申立てもする場合は、それぞれ800円を追加

◇郵便切手(予納郵券代)

・後見:3270円

・保佐や補助:4210円

◇鑑定費用

・大体5〜10万円

◇診断書作成費用

・数千円程度

※医療機関によって異なりますが、大体の相場になります。

◇必要書類の取得費用

・本人

住民票:300円程度

戸籍謄本:450円程度

申立人

本人との関係がわかる戸籍謄本全て:1通450円

候補者

住民票:300円程度

・登記されていないことの証明書:300円

・財産を示す書類代:登記簿謄本や固定資産評価証明書等

※裁判所によって求められる書類が異なります。

◇その他

・書類取得のための郵便代

・申立てを専門家に代行してもらう場合は専門家に支払う手数料

●まとめ

・本人や配偶者、4親等内の親族等が申立人になることができる。

・法定後見を利用するには、申立てのための書類をそろえて申立てをすることが必要である。

・その後、裁判所の審理を経て審判が確定し登記がなされる。

・後見人選任後は、後見人が裁判所に初回報告を行い、以後年に1回定期報告を行う。

・かかる期間は、最短でも1ヶ月半を見込んでおく。

・かかる費用は、最低でも15,000円程は見込んでおく。