相続財産に含まれるもの/含まれないもの

Q. 亡き母が、生前に次男を受け取り人とする生命保険契約を締結していました。生命保険会社から保険金が支払われることになったのですが、この保険金は相続財産に含まれますか?

A. 相続財産に含まれません。 

●はじめに

何が相続財産に含まれて何が相続財産に含まれないのかということはとても重要です。

例えば、次の例を見てください。

亡くなった父には預貯金が3000万あった。他に生命保険金が600万ある。

相続人は子どもA・B・Cの3人である。

この場合、生命保険金が相続財産に含まれるのであれば、遺産の総額は3600万円となり、それをA・B・Cの3人で等分し、1人1200万円を相続します。

つまり、それぞれがもらえるお金は、

A:1200万円 B:1200万円 C:1200万円

しかし、生命保険金が相続財産にならず、受取人がAの場合、3000万円を3人で等分するだけで、600万円はAがそのまま受け取ることになります。

つまり、それぞれがもらえるお金は、

A:1600万円 B:1000万円 C:1000万円

このように、相続財産に含まれるか否かによって、そのお金が相続人の間で分配の対象になるかどうかが決まってくるわけです。

そこで今回は、特に気になる品目に絞って、それが相続財産になるのかどうかについて、解説していきたいと思います。

●生命保険金

生命保険金が相続財産に含まれるかどうかは、保険金の受取人がどのように指定されているかによります。

受取人が被相続人本人である場合、相続財産に含まれます。一方で、受取人が相続人と指定されていたり、相続人のうち特定の者と指定されていたりした場合、生命保険金は相続財産には含まれません。

また、生命保険金は基本的に特別受益とは認められません。※特別受益についてはこちらご参照ください。

保険金の額が相続財産の総額に匹敵する高額であったり保険金受取人と他の相続人及び被相続人との関係によっては、特別受益に準じて処理すべきとされる場合もありますが、原則として、生命保険金を取得した場合に、遺産分割において、相続分が減らされることはありません。

ちなみに受取人が特定の相続人ではなく、相続人とされている場合は、原則として、生命保険金は、法定相続分の割合によって分配するとされています。

●死亡退職金

死亡退職金が相続財産に含まれるかどうかは、その死亡退職金がどのような性質のものとみなされるかによって変わってきます。亡くなられた方への賃金の後払いととらえれば相続財産に含まれると考えるべきですし、遺族の方の生活保障としてとらえれば遺族固有の財産として考えるべきですよね。

といっても、それではそれをどの点において判断するのかということになります。

基本的には、退職金支給規定の支給基準や、受給権者の範囲や順位の規定によって判断するとされています。

例えば国家公務員は、国家公務員法退職手当法で受給権者を遺族として規定しており、遺族の生活保障として位置付けておりますので、この場合、相続財産には含まれないものと考えることができます。

民間企業の場合でも、就業規則等で退職金支給規定を確認することが必要になります。

●香典

香典は、死者への弔いや遺族へのなぐさめ、葬儀費用等の負担の軽減などを目的として、祭司の主宰者や遺族へ交付されるものです。

したがって、香典は相続財産には含まれません。

●お墓・位牌・仏壇・家系図

お墓や位牌、仏壇、家系図等は全て祭司財産です。

祭司財産は、祖先の祭祀の主宰者に帰属するとされていますので、相続財産には含まれません。

※祭祀主宰者についてはこちら。

●まとめ

・相続財産に含まれるか含まれないかによって、受け取れる遺産の額が変わる

・受取人が被相続人本人以外の生命保険金は基本的に相続財産に含まれない。

・死亡退職金は、遺族の生活保障として位置付けられているものであれば相続財産に含まれる。退職金支給規定を確認する必要がある。

・香典は相続財産には含まれない。

・祭祀財産は、相続財産には含まれない。