遺言書保管制度ご利用ガイド③ー相続人等編ー
「遺言者以外の人にとって遺言書保管制度にどんな利用方法があるんだろう」
「遺言者以外でも遺言書の閲覧ができるのだろうか」
これまで遺言書保管制度の記事を2つ書いてきましたが、上記のような疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。今回は、遺言者以外の方はどのように遺言書保管制度を利用することができるのかについて解説していきたいと思います。
●相続人等のできること
相続人等とは、相続人や受遺者、遺言執行者等のことを指します。
※受遺者についてはこちら
・遺言書保管事実証明書の交付請求
・遺言書情報証明書の交付請求
・遺言書の閲覧請求
それでは、一つずつみていきましょう。
●遺言書保管事実証明書の交付請求
遺言書保管事実証明書とは、関係遺言書の保管の有無や遺言書に記載されている作成年月日、保管されている遺言書保管所の名称や保管番号が記載された証明書です。
関係遺言書とは、請求した人が相続人や受遺者、遺言執行者等の関係相続人に該当する遺言書のことなので注意が必要です。
つまり、現に遺言書が保管されていても、請求者が相続人にも受遺者にも関係相続人等にも当てはまらない遺言なのであれば、その請求者には、「関係遺言書が保管されていない旨」の遺言書保管事実証明書が交付されることになります。
よって、請求者が相続人の場合であれば、遺言者が書いた遺言書は確実に関係遺言書であるはずなので、もし「関係遺言書が保管されていない旨」の遺言書保管事実証明書が交付されれば、そもそも遺言書保管制度を利用しての遺言書は存在しないということを意味します。
このように、請求者が相続人なのか、それ以外の者なのかによって、遺言書が保管されていなかった場合の意味合いが異なってくるので気をつけましょう。
●遺言書情報証明書の交付請求
遺言書情報証明書には、遺言書の画像情報が全て記載されています。この証明書によって遺言書の内容やそれが法的効果をもつような方式にしっかり適合しているかを確かめることができるわけです。
検認の記事にて、検認完了後、検認済証明書を請求してそれを元に遺言執行を行うという説明をしましたが、遺言書保管制度においては、検認は不要なので、遺言書情報証明書を使って、その後の遺言執行をしていくことになります。前回の記事でもお話したように、遺言書の原本が返還されることはありません。
●遺言書の閲覧請求
遺言書の原本やモニターで保管されている遺言書の画像を見ることができます。原本の閲覧は、原本を保管している遺言書保管所でしかできませんが、モニターによる閲覧はどこの遺言書保管所でも可能です。また、原本閲覧とモニター閲覧ではかかる手数料も異なります。
●手続きについて
請求場所は、どの手続きも、全国どこの遺言保管所でも可能です。
※遺言書原本の閲覧請求は、原本が保管されている保管所でしかできません
必要書類は、それぞれの手続きの交付請求書と添付書類です。添付書類は請求者や手続きによって異なるのでこちらで確認してください。
手続きは遺言書保管所に直接行くか郵送になります。直接訪問する場合は、必ず予約を取りましょう。予約の注意点については前回の記事を参照してください。また、手続きが時間内に終わらないと一旦帰ってから再度来庁することになるので、あらかじめ作成してからいきましょう。こちらからダウンロード可能です。
手数料は、
遺言書保管事実証明書 1通 800円
遺言書情報証明書 1通 1400円
遺言書の閲覧 原本 1回 1700円
モニター 1回 1400円
です。
●注意事項
どの請求も遺言者の死亡後でなければ手続きすることができません。
また、遺言書情報証明書と遺言書の閲覧請求に関しましては、ある相続人が手続きを完了した後に、他の全ての相続人等に対して、関係遺言書を保管している旨の通知がなされます(関係遺言書保管通知)。
●まとめ
・相続人等のできる手続きには、【遺言書保管事実証明書の交付請求】【遺言書情報証明書の交付請求】【遺言書の閲覧請求】がある
・遺言書保管事実証明書は、請求者の関係遺言書が保管されているかどうかを確認する手続きである。
・遺言書情報証明書は、遺言書の全ての情報が記載されており、遺言執行の手続きに使用できる
・遺言書の閲覧は原本の閲覧とモニター閲覧がある
・どの手続きも遺言者の亡くなった後にしか行うことができない