特別受益①ー特別受益とはー
●はじめに
「父の遺産について、兄は父の生前に高額な大学の学費とかマンションの購入費とかで支援を受けていたのに、そのような支援を特に受けてこなかった弟の自分が兄と同じ相続分なのは納得がいかない」
遺産分割を巡ってこのような気持ちを抱えている方は少なくありません。
例えば、遺産分割の際に、高額な学費やマンションの購入費用を考慮に入れないとなると、一方の相続人だけが結果的に財産を多く貰い受けることになるので公平とは言えないですよね。
そこで、民法では、生前、被相続人から受けた贈与等について、「特別受益者」という概念を設けて、相続人間の公平性を確保しています。
●特別受益とは
特別受益を噛み砕いて説明すると、生前に被相続人から受けた贈与などを相続の前渡しとみなしますよ、ということです。
例えば、亡くなった父の遺産が3000万円あるとします。
相続人は子供のAとBです。
生前マンション購入のためにBが600万円の援助を受けたとすると、3000万円に600万円を足して、3600万円を相続財産とします。
600万円が贈与に当たり、みなし相続財産として現に残っている3000万円にプラスするということです。
それを2等分して、Aは1800万円を受け取り、Bはすでに600万円分受け取っているので、1800-600で1200万円が入ることになります。
●持ち戻し
上記のように、特別受益にあたる生前の贈与等をみなし相続財産として相続財産に戻すことを持ち戻しといいます。
特別受益があるかどうかや認めるかどうかは遺産分割協議において話し合われます。相続人間で同意が難しい場合は、裁判所への調停や申立てを行うことになります。
このように特別受益は、紛争の種になりやすいので注意が必要です。
●まとめ
・特別受益とは、生前に受けた贈与等を相続の前渡しとみなすことである。
・特別受益は、みなし相続財産として相続財産に戻す。これを持ち戻しという。