遺言書保管制度ご利用ガイド①ー遺言書保管制度とはー

●はじめに

「自筆証書遺言を作成したいけれど、自分で保管するのは自信がない」

「遺言書を自分で保管して、失くしてしまったり、亡くなった時に見つけてもらえなかったらどうしよう」

「検認の手続きによって残された家族に負担をかけたくない」

こちらの記事でも指摘した通り、自筆証書遺言は手軽さがある一方で、紛失・破棄・改ざん・隠匿のリスクがあったり、検認の手続きには手間暇がかかるので遺言の速やかな実行には向かなかったりするというデメリットがありました。

そのようなデメリットを軽減してくれるのが遺言書保管制度です。2020年7月から新しく運用が開始されました。

今後3回に分けて

①遺言書保管制度とは何か

②遺言者の方はどのように利用できるか(必要書類・費用・期間等)

③相続人の方はどのように利用できるか(必要書類・費用・期間等)

について解説していければと思います。3つの記事で遺言書保管制度の概要をつかむことができます。

●遺言書保管制度とは

遺言書保管制度は、2018年に成立した「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下、遺言保管法)によって2020年7月に運営が開始された制度です。その名の通り、作成した遺言書を保管してくれます。遺言保管法を参考にしながら、メリットや保管のルール等を見ていきましょう。

●メリット

・紛失や変造、隠匿のおそれがない

・検認が不要

・遺言者の死後、相続人等へ通知してくれる

・全国の法務局で遺言書の閲覧や証明書の請求ができる

自分で保管しなくても良いので紛失や変造のリスクがありません。

また、検認が不要なので、遺言の執行を比較的速やかに行うことができます。
*検認についてはこちら

さらに、希望する方に関しては、遺言保管所が戸籍担当部署と連携をとって、遺言者の死亡が確認できたときは、遺言者があらかじめ指定しておいた1名に対して通知をしてくれます。

そして、遺言者のお亡くなりになった後は、相続人や遺言執行者が法務局で遺言書の閲覧や遺言執行に必要になる遺言情報証明書等の証明書の交付請求ができます。

●主なルール

次に主なルールを見ていきましょう。

□遺言書の要件

保管制度が利用できる遺言書の方式は、自筆証書遺言に限ります。また、A4サイズの用紙で作成し、四隅の余白をそれぞれ何ミリ確保する等の様式も決まっています(詳しくは次回の記事にて説明します)。

□申請先

申請先は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地にある遺言書保管所です。遺言書保管所とは、「法務局の指定する法務局」(第2条)とされていて、管轄の遺言書保管所についてはこちらで検索できます。

□申請者

保管申請の際は、遺言者本人が出頭をしなければいけません。本人確認ができる書類(運転免許証)を提示します。本人証明ができないと却下されてしまいます。

□保管期間

・遺言書の保管期限は、遺言者の死亡の日から50年。遺言書の画像等のデータに関しては死亡から150年です。また遺言者の生死が明らかでない場合は、出生した日から120年経過後のさらに50年経過後まで保管してもらえます。

●まとめ

・遺言書保管制度は、自筆証書遺言のデメリットを軽減してくれる制度である

・メリットは、【紛失・変造のおそれがない】【検認が必要ない】【遺言者の死亡を指定した者に通知してくれる】【相続人等が遺言書の閲覧や証明書の請求ができる】

・利用できるのは自筆証書遺言に限る。また用紙のサイズ等様式が決まっている

・申請先は指定の法務局で、簡単に検索できる

・申請は本人が出頭して行わなければならない

・保管期間は死亡の日から50年。画像等のデータは死亡から150年。

次回は、実際に遺言者の方が保管制度を利用する際の手続き等についてより詳しく見ていきましょう。