遺産分割協議とは

●はじめに

「父親が遺言書を残さずに亡くなった場合、遺産はどのように受け継がれるのか」

例えば、自分の親が亡くなった時、遺言書を作成していれば、その指定通りに遺産を配分することになりますが、遺言書を残していない場合、相続財産は一旦相続人全員の共有財産になります。

そして相続放棄をしない場合は、遺産分割協議という話し合いを通じて、遺産をどのように分割するかを話し合います。

※相続放棄についてはこちら

今回は、この遺産分割について解説していこうと思います。

●遺産分割協議とは

先ほど述べた通り、遺産をどのように分割するかの話し合いを遺産分割協議と呼びます。遺産分割協議が行われるケースは主に次の三つです。

・被相続人が遺言書を残さずに亡くなった

・被相続人が遺言書に記載していない財産を分割する必要がある

・遺産分割当事者全員の合意で、遺言書の指定する遺産分割方法とは異なる分割をする

逆に言えば、遺言書通りに遺産を分割する場合や、相続人が1人の場合は遺産分割協議は必要ありません。

また、遺産分割協議が不成立の場合は、調停の申立てをし、それも不成立に終われば、裁判所の審判によって、どのように財産を分配するかが定められることになります。

●遺産分割協議を開始する前の調査

遺産分割協議が成立するには、相続人全員の同意が必要になります。また、分割する財産が定まっていないと、そもそも何を分割すればよいのかがわかりません。

そのため、必ず相続人と財産の調査をして、その範囲を確定させる必要があります。

※相続人の調査についてはこちら。

※財産の調査についてはこちら。

●遺産分割協議書

遺産分割協議で、遺産分割の方法や相続の割合等を相続人全員の合意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。

基本的には、「誰が」「何を」「どのくらい」取得するのかを明記します。

また、現在判明していない財産が今後発見された場合に、誰が取得するのかについても記載しておきます。記載しておかないと、再度遺産分割協議を開かなければならなくなります。

遺産分割協議書は、各相続人が1通ずつ持っておけるように、基本的に相続人全員に1部ずつ渡します。

そうして出来上がった遺産分割協議書を用いて相続の手続きを進めていきます。

以下、主な相続の手続きと遺産分割協議書を含めた必要書類の提出先を挙げておきます。

・預金の名義変更・払い戻し    金融機関

・株式の名義変更         証券会社

・不動産の名義変更        法務局

・自動車の名義変更        運輸支局

・相続税の申告          税務署

●その他

遺産分割に期限はありません。ただし、相続税の申告期限が10ヶ月以内であることを考えるとできるだけ速やかに行うことをお勧めします。

また、2021年3月の民法改正によって、特別受益や寄与分の主張の期間制限や相続登記申告の義務化が今後試行されることも考慮すると、遺産分割を長年に渡って放置することのないように、円滑な手続きを進める必要があります。

●まとめ

・遺言書が残っていない場合、相続人全員が参加して遺産分割協議が必要になる

・遺産分割協議は相続人全員の同意によって成立する

・遺産分割協議が不成立の場合、調停や審判によって遺産の分割が決まる

・遺産分割協議を開くにあたって、相続人や財産の範囲を確定させる調査を行う

・遺産分割協議で同意した内容を遺産分割協議書に記載する。

・遺産分割協議書を用いて相続手続きを進めていく。

・遺産分割に期限はないが、相続税の申告期限等を考慮すると、できるだけ速やかに行うとよい