「あそこのクリニックは先生と全然話ができない」

「医師と直接話すのは正直緊張する」

「本当はもっとこうして欲しかった」

「先生はいい人だけれどクリニックとの連携が取りづらい」

「誰と話せば相談に乗ってくれるのかわからない」

「要望を伝えたはずなのに回答がないあるいは遅い」

「窓口の方が頼りない」

これは私が訪問診療クリニックの相談員としてご利用者やご家族、関係機関の方に聞いた話のごく一部です。

私はこれまで訪問診療クリニックの相談員として勤めてきました。新規患者数一ヶ月5人ほどだったクリニックが2年ほどで新規患者数:月平均40人超・最高50人超、総患者数:400人超になりました。そのほとんどは施設ではなく在宅の患者様です。

これは端的に述べるとクリニックが地域に親しまれることに成功したからです。地域に親しまれるとは誰もがアクセスしやすいクリニックに成長したということです。アクセスがしやすいというのは駅近に立地しているということではありません。連携を取るのに敷居が高い訪問診療というサービスにおいて、それを自覚しその敷居を取り払うような体制を構築し実践したということです。

その実践は端的にまず相談員を置くということです。そしてそれを適切に育て上げるということです。院長先生の人柄がよく患者様のためにあくせく働くというのは当たり前の前提ですが、それだけでは訪問診療クリニックが地域に親しまれようになるのは難しいです。医師に直接ニーズを表明する人はあまり多くないからです。そして医師の振る舞いはそのようなニーズの表明がなければ向上していきません。在宅医療の知識に精通し、地域のきめ細やかなニーズを掬い上げて、医師と地域をつなげるスペシャリストが必要です。なので当然のことではありますが、ただ相談員を置いただけでは意味がありません。また事務や診療助手等それ以外のスタッフはどうでもよいということも意味しません。クリニックの顔として相談員を育てるということの正しい理解がまず第一であるということです。それが院外においては地域とのコミュニケーション力を高め、院内においては地域のきめ細やかなニーズに応えるためのシステム作りにつながります。そして今述べたこのような結論こそが、私が相談員としてご利用者様やご家族、ケアマネジャーや訪問看護師、病院の退院支援部との関係を深めて表明してもらった不満やニーズ、私が勤めていたクリニックを頼ってくれる理由から導き出されたものなのです。そしてその話を聞く限り私の考える相談員体制が敷けているクリニックは多くありません。

当ブログでは、在宅医療介護サービスにおける訪問診療の特性とは、アクセスのしやすいクリニックとはどのようなクリニックなのか、そこにおいて相談員とはどのような役割を果たすべきなのか、そのような相談員を育てるにはどのようにすればよいのか、相談員を中核とした体制とはどのような力学で動くのか、勉強会や飛び込み営業よりも大切な実践とその方法等について記していきます。

患者数が増えることはクリニックが地域のニーズに応えて信頼を勝ち得た結果でしかあり得ません。先生に地域貢献の情熱はあるのに、地域のニーズを掬いとれなければ空回りで終わってしまいます。また、ただ単に紹介が欲しいという一方的な営業に走るクリニックも多いと聞き辟易としてしまいます。

今後ますます期待が高まる地域医療の中核を担う訪問診療において、日本中の地域で一つでも多く質の高いサービスが展開されることが一人一人のご利用者様の生活を支えることだと信じています。そのための適切な運営サポートをさせていただけたらと思います。