遺言の内容をバレずに執行する

Q.遺言の内容を特定の相続人にバレないように執行する方法はありますか?

A.基本的にありません。残された方の負担を考えるとそうするべきでもないと思います

●はじめに

特定の相続人に全ての遺産を相続させる旨の遺言書作成のご依頼において、時折相談されるのが、その遺言によって遺産を受け取れない相続人に、その遺言を知られないように執行する方法がないかというものです。

ご相談者の方からすると、どうにかして紛争を未然に防ごうと考えているのがみてとれるので、とても気持ちは分かるのですが、あまりお勧めできるやり方ではありません。

●そもそもバレずに執行することは可能なのか

そもそも自筆証書遺言の場合は、検認の手続きにおいて裁判所から全ての相続人に通知が発送されます。

また、公正証書遺言の場合でも、遺言執行者は全ての相続人に遺言の執行を告げ知らせなければならない義務があります。

遺言執行者を指定せず、相続時にも選任しなければよいといえばそれまでかもしれません。しかし、そうすると、たとえば預貯金の払い戻しの手続きの際、銀行に相続人全員の承諾書や印鑑証明書等を求められた場合、やはり遺言や相続が開始されていることが、相続人全員に明るみになることになります。

●遺言の存在はなるべくオープンにしておくべき

遺言の存在をバレないようにひた隠しにしてバレてしまったら、もしかしたら穏便にすんでいたかもしれない問題が、一気にヒートアップしてしまうことは目に見えています。

遺留分を侵害してしまうような紛争の種になる遺言書の場合は、なるべく相続人になる方々にオープンにすることをお勧めします。そして、それが特定の相続人に対する恨みからでないのであれば、それを作成するに至った遺言者の方の思いを率直に伝えるのが得策だと思います。

それが、遺言者の方がお亡くなりになった後、大切に思っている人に無理な負担をかけないための最善の方法なのです。