前回記事の中で、公正証書遺言のデメリットをあげました。

”遺言の内容を公証人と証人に知られることに抵抗感がある人がいる”

でしたよね。

秘密証書遺言は、遺言の存在は明確にしておきたいのだけれど、どうしても内容を知られたくない際に利用できる方式です。

作成方法は、

・遺言者が遺言書を作成し、署名押印する。 *氏名以外は自書する必要はない

・遺言者が遺言書を封筒に入れて証書に用いた印章で封印し公証役場に持参する。

・遺言者が公証人1人と証人2人の前に封書を提出し、自分の遺言書であること、筆者の氏名及び住所を申述する。

・公証人がその遺言書が提出された日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者・公証人・証人それぞれが署名し印を押す。

●メリット

・遺言書の内容を他人に知られない。

・公証人が公証してくれるため遺言書が本人の意志で書かれたかどうかといった争いを回避できる

・自書する必要がない。 *氏名は自書する必要あり

・公正証書遺言と比べて費用が抑えられる。

秘密証書遺言は自書する必要がありませんが、何らかの理由で秘密証書と認められなくても、自筆で書いておけば、自筆証書遺言とは認められる可能性があるので、可能であれば自筆で書いておくのも良いと思います。

また、公正証書遺言で発生する公証人への手数料は財産の額や内容によって変動しますが、秘密証書遺言ではその手数料の額が決まっております(1万1千円)。

●デメリット

・公証役場で遺言書の保管は行わないので、紛失や発見されない恐れがある。

・他人に知られないということは、誰のチェックも受けないということなので、遺言書の方式にのっとっていない場合、無効となる恐れがある

・検認の手続きが必要

秘密証書遺言では自筆証書遺言と同じく保管は自己責任で行うことになります。遺言者本人が保管するか、遺言者が死亡したことをすぐに知ることができる人で信頼のおける人に保管しておいてもらうとよいでしょう。例えば、遺言によって財産を多くもらう人や遺言書で遺言執行者に指定した人等です。

また、せっかく手間をかけて公証してもらったにもかかわらず、内容自体にチェックが及ばないので民放の方式にのっとっていない場合、開封してみたけれども法的効果が生じないという事態になる可能性もあります。

そして、自筆証書遺言と同じく検認の手続きが必要になってきます。

●あまり利用されない秘密証書遺言

以上、見てきた通り、秘密証書遺言は、その内容を他人に秘密にできるというメリットがあります。反面、デメリットも多いので実際はあまり多く利用されておりません。内容を秘密のまま公証人に遺言書自体は本物であると認めてもらうということは、判断能力の低下している高齢者に、周囲のものが自己に有利な内容の遺言を押し付ける恐れもあるわけです。そのような理由から廃止した方が良いのではないかという意見もあります。ただし、自書ができないので自筆証書遺言を書くことができないけれど、どうしても費用は抑えたい等の事情がある場合には効果的な選択肢であると思います。